マンションの管理費や修繕積立金の滞納額があっても売れる?

マンションの管理費や修繕積立金の滞納額があっても売れる?

管理費や修繕積立金の滞納があるマンションでも売却することはできますが、そのままでは滞納額の支払義務を買主が引き継ぐことになりますから、重要事項として説明義務があり、その清算方法について合意しておく必要があります。

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管理費・修繕積立金を滞納したマンション売却

 

「マンションを売却したいけど、管理費や修繕積立金の滞納がある」という方は、ぜひご覧ください。

  • 管理費や修繕積立金を滞納しているマンションでも売却できるのか?
  • 売却できるとしたら、どんな手続きになるのか?
  • 管理費や修繕積立金の滞納額は、どうなるのか?

そんな疑問にお答えします。

 

管理費や修繕積立金の滞納があるマンションを売却するときの注意点

マンションの管理費や修繕積立金の滞納があっても、売却することは可能です。

 

滞納している管理費や修繕積立金は、マンションの売買代金から支払います。その方法は2つありますが、どちらの方法を選択しても、売主が滞納額を負担することになります。

 

その方法をお伝えする前に、次のことを押さえておいてください。

 

管理費・修繕積立金の滞納額は引き継がれる

管理費や修繕積立金を滞納しているマンションを売却すると、滞納している管理費や修繕積立金の支払義務は、買主(新しい所有者)が引き継ぎます(区分所有法8条)

 

管理費・修繕積立金の滞納額があることを、買主が知っていたかどうかは関係ありません。たとえ、管理費・修繕積立金の滞納があることを知らずにマンションを購入したとしても、滞納額の支払義務は、法律上、買主が承継するのです。

 

そのため、マンションを売却するときには、管理費・修繕積立金について、滞納の有無と滞納額を重要事項として買主に説明することが仲介業者に義務付けられています。

 

管理費・修繕積立金の滞納額の支払い方

さて、管理費・修繕積立金の支払義務は買主が引き継ぐことを踏まえ、その滞納額の支払い方についてです。

 

滞納額が少額なら、買主が「それくらいなら支払いますよ」と、支払いを了承してくれることもあるでしょうが、そういうケースは稀です。

 

一般的には、次の2つの方法のいずれかとなります。

  • 売却代金の中から、売主が滞納額を支払う
  • 滞納額分を値引きして売り、買主が支払う

 

管理費や修繕積立金の滞納額は、いずれかの方法で売買代金から支払い、売主が滞納額分を負担する、ということです。

 

住宅ローンが残っているマンションを売るときに、売却代金で住宅ローンを返済しますが、それと同じように、管理費・修繕積立金の滞納額についても、売買代金から支払うのです。

 

ただし、住宅ローンと違い、管理費・修繕積立金の支払義務は、買主が承継します。そのため、売主が売却代金から支払う方法だけでなく、滞納額分をマンションの売買価格から値引きし、支払義務を承継した買主が滞納額を支払う、という方法もあるのです。

 

任意売却の場合

マンションの管理費や修繕積立金を滞納している場合は、住宅ローンも滞納していることが多く、住宅ローンの返済ができない場合は、任意売却することになります。

 

任意売却の場合には、売却代金の配分を事前に債権者と協議します。その際、マンションの管理費・修繕積立金の滞納額は、債権者によりますが、元本を売却価額から控除することが認められます。

 

管理費・修繕積立金に関する法律上の規定

マンションの管理費・修繕積立金について、法律上、どのように規定されているのか、さらに詳しく見ていきましょう。

 

マンションの管理費・修繕積立金については、区分所有法の先取特権(区分所有法7条)と特定承継人の責任(区分所有法8条)の規定が適用され、法律で特別に保護されています。

 

簡単にいえば、マンションの管理費や修繕積立金の滞納について、管理組合は、債務名義がなくても競売を申し立て優先弁済を受けることができ、マンションを売却して所有者が変わっても、滞納した管理費・修繕積立金の支払義務は、新しい所有者(買主)に引き継がれる、ということです。

 

先取特権(区分所有法7条)

先取特権とは、法律で定められた特別な債権を持っている者が、債務者の一定の財産から他の債権者よりも先に債務を支払ってもらえる権利のことです(民法303条)

 

本来、債権は平等で、債務者が破産したような場合、各債権者は、残された債務者の財産を、債権額に応じて平等に分けるのが原則です。

 

この原則の例外となる債権が、法律上認められており、しかも、この例外を直接に債権の効力とせず、その債権を持つ者に債務者の財産について成り立つ担保物権を認めることによって、他の者より先に債務を支払ってもらえるようにしています。この担保物権が、先取特権です。

 

管理費・修繕積立金の法律上の性格

区分所有法では、次のように先取特権を定めています。

 

区分所有法7条1項(先取特権)

区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。

 

マンションの管理費や修繕積立金は、一般的に、規約・集会決議により定められますから、「規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」に該当します。

 

仮に、規約や集会決議によって定められていなくても、「共用部分等につき他の区分所有者に対して有する債権」に当たります。

 

したがって、管理費・修繕積立金について、マンション管理組合は、「債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する」ことになります。

 

先取特権の行使

管理費・修繕積立金の滞納者に対し、マンション管理組合が先取特権を行使する場合、債務名義がなくても直ちに競売申立てをすることができ、一般債権者に優先して弁済を受けることができます。

 

なお、先取特権は、滞納者の「区分所有権」または「建物に備え付けられた動産」について実行可能です。

 

先取特権は実効性に欠ける

建物に備え付けた動産(家財道具など)は、ほとんど生活必需品で、法律上の差押禁止財産とされているため(民事執行法131条)、先取特権の実行による競売は困難です。

 

また、先取特権は、抵当権など登記のある担保物権には劣後します(民法336条)。管理費や修繕積立金を滞納している場合、住宅ローンを滞納していることも多く、抵当権者が優先されます。

 

このため、先取特権の行使は、実効性に欠ける場合が多いと考えられています。

 

先取特権は実効性に欠けますが、ここでは、どうやって債権を回収するかが問題ではありません。

 

管理費・修繕積立金の滞納については、マンション管理組合が、先取特権を行使し、直ちに競売申立てをすることができ、一般債権者に優先して弁済を受けられるよう、法律で保護されているという点が大事です。

 

特定承継人の責任(区分所有法8条)

特定承継人の責任について、区分所有法で次のように定めています。

 

区分所有法8条(特定承継人の責任)

前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

 

前条第1項というのは、区分所有法7条1項の先取特権に関する規定です。

 

この区分所有法8条の規定により、マンションの管理費や修繕積立金の支払義務については、「区分所有者の特定承継人」が引き継ぐことになります。

 

「特定承継人」とは、特定の権利を引き継ぐ者のことです。マンションの売買によって区分所有権を取得する新しい所有者が該当します。他人の権利義務を全て引き継ぐ者は「包括承継人」といい、相続における相続人が該当します。

 

マンション標準管理規約における規定

「マンション標準管理規約(単棟型)」第5条は、「この規約及び総会の決議は、区分所有者の包括承継人及び特定承継人に対しても、その効力を有する」としています。

 

なお、同「マンション標準管理規約(単棟型)コメント」の「第5条関係」において、「包括承継は相続、特定承継は売買及び交換等の場合をいう」と説明されています。

 

 (国土交通省のWebサイトにリンクしています)

 

重要事項説明義務

管理費や修繕積立金については、現所有者の滞納の有無・金額を含めて、重要事項として買主に説明するよう、仲介業者は法律で義務づけられています。

 

宅建業法35条(重要事項の説明等)第1項

宅地建物取引業者は、…各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、…宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

 

第6号 当該建物が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第4項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの

 

宅建業法施行規則16条の2(法第35条第1項第6号の国土交通省令・内閣府令で定める事項)

第6号 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額
第7号 当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額

 

さらに、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、第35条第1項第6号関係の部分で、次のように説明しています。

 

6 修繕積立金等について(規則第16条の2第6号関係)

規則第16条の2第6号は、いわゆる大規模修繕積立金、計画修繕積立金等の定めに関するものであり、一般の管理費でまかなわれる通常の維持修繕はその対象とはされないこととする。

 

また、当該区分所有建物に関し修繕積立金等についての滞納があるときはその額を告げることとする。ここでいう修繕積立金等については、当該一棟の建物に係る修繕積立金積立総額及び売買の対象となる専有部分に係る修繕積立金等を指すものとする。

 

なお、この積立て額は時間の経緯とともに変動するので、できる限り直近の数値(直前の決算期における額等)を時点を明示して記載することとする。

 

7 管理費用について(規則第16条の2第7号関係)

「通常の管理費用」とは、共用部分に係る共益費等に充当するため区分所有者が月々負担する経常的経費をいい、規則第16条の2第6号の修繕積立金等に充当される経費は含まれないものとする。

 

また、管理費用についての滞納があればその額を告げることとする。

 

なお、この「管理費用の額」も人件費、諸物価等の変動に伴い変動するものと考えられるので、できる限り直近の数値を時点を明示して記載することとする。

 

マンションの管理費や修繕積立金は、滞納額を含めて、買主(新しい所有者)が支払義務を引き継ぎます。前の所有者が滞納していたことを知らずに、マンションを購入したとしても、滞納額を含め、買主は支払義務を承継します。

 

そのため、買主が予期せぬ支払義務を負わないよう、マンションの管理費・修繕積立金については、滞納の有無・滞納額を含めて、重要事項として買主に説明することが、仲介業者に義務づけられています。

まとめ

マンションの管理費・修繕積立金の滞納があっても、売却することはできます。

 

ただし、管理費・修繕積立金の滞納額分については、マンションの売買価格から値引きするか、売却代金の中から売主が支払うか、いずれかの方法により、売主が負担することとなります。

 

なお、管理費・修繕積立金の当月分の清算方法についてはこちらをご覧ください。

 

管理費・修繕積立金の滞納があるマンションを高く売るには?

管理費や修繕積立金の滞納があると、足元を見られ、価格交渉において過度の値引きを求められることがあります。たとえ管理費や修繕積立金の滞納があっても適正価格で売却できるよう、仲介業者選びが重要です。

 

不動産一括査定「イエウール」を使えば、そういうマンションの売却実績が豊富な不動産業者に査定を依頼することができるので、高く売ることが可能です。

 

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公開日 2022-05-19 更新日 2023/08/23 11:34:28