基本指針とガイドラインの改正により空き家対策は今後どう強化されるのか?

空家法基本指針・ガイドライン改正

 

空家法の「基本指針」と「ガイドライン」が、2021年6月30日に改正されました。改正の目的は、空き家対策の強化です。

 

空き家対策は、今後どのように強化されるのか、実家を相続して空き家のまま放置している方は特に、チェックしておくことをおすすめします。

 

 

基本指針とガイドライン改正の目的とは?

空家法「基本指針」と「ガイドライン」改正の目的について、国土交通省は、空家法の完全施行(2015年5月26日)後の取組状況をふまえ、空き家対策(空家等の発生の抑制、利活用、除却等の取組)を強力に推進するためとしています。

 

空家法で措置対象となるのは、「特定空家等」です。特定空家等とは、そのまま放置すれば「倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」や「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」などの状態にあると認められる空家等です(空家法2条2項)

 

特に重要な改正ポイントは、特定空家等には、現に著しく保安上危険または著しく衛生上有害な状態の空家等だけでなく、将来そのような状態になることが予見される空家等も含むと明確にしたことです。

 

これにより、損傷の比較的小さい空家等についても、特定空家等と判断し、老朽化が進む前に、早めの対策を所有者等に促すことが可能となります。

 

「将来そのような状態になることが予見される場合を含む」ことは、旧ガイドラインにも「かっこ書き」で記載がありました。それを前面に押し出したのです。

 

  • 基本指針とは、空家法5条1項に基づく「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」
  • ガイドラインとは、空家法14条14項に基づく「特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」

 

幅広く特定空家と認定し、周辺への悪影響が顕在化する前から必要な措置を講じる

基本指針とガイドラインが具体的にどう変わったのか、見ていきましょう。

 

基本指針の改正ポイント

基本指針の「特定空家等に対する措置の促進」の箇所が、次のように改正されました。

 

旧「基本指針」

法第2条第2項に規定する「特定空家等」に該当する建築物等は、適切な管理が行われていない結果として、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものであり、市町村長は、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図るために必要な措置を早急に講ずることが望ましい。

 

新「基本指針」

特定空家等は、法第2条第2項に定義するとおり、例えば現に著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態にあるもののほか、将来著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態になることが予見されるものも含むものであり、広範な空家等について特定空家等として法に基づく措置を行うことが可能である。市町村長は、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図る観点から、このような特定空家等の状態に応じて必要な措置を講ずることが望ましい。

 

旧・基本指針では、特定空家等は「地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているもの」であるから「必要な措置を早急に講ずることが望ましい」としていました。

 

新・基本指針は、特定空家等は「現に著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態にあるもののほか、将来そのような状態になることが予見されるものも含むものであり、広範な空家等について特定空家等として法に基づく措置を行うことが可能」だから、「特定空家等の状態に応じて必要な措置を講ずることが望ましい」としました。

 

現に悪影響が出ていなくても、その蓋然性が高い場合は、幅広く特定空家と認定し、状態に応じた早めの行政指導を行うよう市町村に求めたのです。

 

ガイドラインの改正ポイント

改正後の新「ガイドライン」は、こうなっています。

 

現に著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態の空家等のみならず、将来著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態になることが予見される空家等も含めて、幅広く対象と判断することのできるものであることに留意が必要である。

 

特定空家等については幅広く対象と判断することのできるものであるため、周辺の生活環境への悪影響が顕在化する前の段階において所有者等による自主的な対応を促す観点から、そのまま放置すれば将来的に周辺の生活環境への悪影響が顕在化することが予見されるものとして早期に特定空家等として判断し、所有者等に対する法第14条に基づく助言又は指導を開始することも考えられる。

 

そのまま放置すれば著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態となることが予見される空家等については幅広く特定空家等に該当するものと判断し、周辺の生活環境への悪影響が顕在化する前の段階から、法第14条に基づく助言又は指導を行い、改善がなされない場合には勧告を行った上で、必要に応じて命令等の実施を検討することも考えられる。

 

つまり、空家法の規定に従えば、もっと幅広く特定空家等と判断することができるから、周辺の生活環境への悪影響が顕在化する前の段階から、法に基づく措置を積極的に実施するよう、国は市町村に求めているのです。

 

今後、特定空家等と認定され、必要な対応を求められる空き家の所有者が増えてくることが考えられます。

 

固定資産税等の住宅用地特例の厳格化

もう1つ、空き家の所有者に大きく影響する改正ポイントが、固定資産税等の住宅用地特例の厳格化です。

 

そもそも、住宅用地特例が適用されるのは、住宅の敷地の用に供されている土地です。住宅とは、人の居住の用に供する家屋です。

 

居住の用に供すると認められない家屋の敷地は、空家法にもとづく勧告を受けるまでもなく、住宅用地特例の適用対象から除外されます。

 

ガイドラインや基本指針で、そのことが明確にされたのです。

 

住宅用地特例について、ガイドラインはどう変わったか

新ガイドラインでは、「固定資産税等の住宅用地特例に関する措置」について、次のように記載されています。

 

特定空家等に該当する家屋に係る敷地が、固定資産税等のいわゆる住宅用地特例の対象であって、法第14条第2項に基づき、市町村長が当該特定空家等の所有者等に対して除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告した場合は、地方税法第349条の3の2第1項等の規定に基づき、当該特定空家等に係る敷地について、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される。

 

ここまでは、旧ガイドラインにも記載がありました。特定空家等に認定され、必要な措置をとるよう勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される、という内容です。

 

新ガイドラインでは、これに続けて、次の内容が追加されています。

 

なお、家屋の使用若しくは管理の状況又は所有者等の状況等から客観的にみて、当該家屋について、構造上住宅と認められない状況にある場合、使用の見込みはなく取壊しを予定している場合又は居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合には、当該家屋が特定空家等に該当するか否かに関わらず、住宅には該当しないものであるため、そうした家屋の敷地についてはそもそも固定資産税等の住宅用地特例は適用されない。

 

この内容自体は、新しいものではありません。2015年(平成27年)5月26日、空家法の完全施行にともない、特例の対象となる住宅用地の取扱いの明確化を図るため、総務省が都道府県に通知した内容です。

 

 ※総務省のWebサイトにリンクしています。

 

ガイドラインでは、続けてこう記載されています。

 

したがって、空家等対策で得られた情報について、税務部局(特別区にあっては都)と情報共有し、連携して必要な対応を行うことが重要となる。

 

空家法では、特定空家と認定し、必要な措置を講じるよう勧告した段階で、住宅用地特例の適用が除外される仕組みになっていますが、そもそも特定空家等と認定されるような家屋は、住宅用地特例を受けられる対象ではありません。

 

空家法に基づく立ち入り調査を進める段階で状況を把握できますから、特定空家として行政指導を進める判断をする前でも、税務部局と情報共有することで、住宅用地特例が解除されることはあり得ます。

 

住宅用地特例について、基本指針はどう変わったか

基本指針では、住宅用地特例の記載は次のように変わりました。

 

旧「基本指針」

人の居住の用に供すると認められない家屋の敷地に対しては、そもそも固定資産税等の住宅用地特例は適用されないことに留意が必要である。

 

新「基本指針」

家屋の使用若しくは管理の状況又は所有者等の状況等から客観的にみて、当該家屋について、構造上住宅と認められない状況にある場合、使用の見込みはなく取壊しを予定している場合又は居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合には、住宅には該当しないものであるため、そうした家屋の敷地についてはそもそも固定資産税等の住宅用地特例は適用されない。

 

改正された基本指針の内容は、総務省の通知と同じです。

 

相続空き家を放置していると、住宅用地特例が解除されるかも…

住宅用地特例の適用に関し、基本指針とガイドラインに新たに追加された部分を詳しく見てみましょう。

 

次の場合は住宅に該当せず、その敷地について、そもそも固定資産税等の住宅用地特例は適用されません。

 

  • 構造上住宅と認められない状況にある場合
  • 使用の見込みはなく取壊しを予定している場合
  • 居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合

 

住んでいないと、ただちに住宅用地特例が解除されるということはありませんが、居住の用に供すると認められない家屋の敷地は、そもそも住宅用地とは認められないので、特定空家等と認定されるまでもなく、固定資産税などの軽減措置の対象から除外されます。

 

今後は、空家法14条2項にもとづく勧告後の住宅用地特例の解除とともに、特定空家として勧告を受ける前であっても、税務部局から直接、住宅用地特例を解除されるケースも出てきそうです。

 

まとめ

空家法の基本指針とガイドライン改正により、特定空家と認定され、行政指導を受ける空家が多くなりそうです。

 

特定空家と判断され、必要な措置を講じるよう市町村から勧告されると、住宅用地特例が受けられなくなり、固定資産税や都市計画税が跳ね上がります。

 

また、そもそも居住の用に供すると認められない家屋の敷地は、住宅用地特例の対象となりませんから、住宅用地特例解除に向けた調査も進められています。

 

相続した実家・空き家は、早めに売却するなり、活用するなり、決めるのがよさそうです。

 

 

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