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空き家は、適切に維持管理をしていないと、市町村から特定空家と認定され、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる場合があります。詳しく解説しましょう。
住宅用地は、住宅用地特例により、固定資産税や都市計画税が軽減されます。
住宅用地特例とは、住宅用地について、固定資産税の課税標準額を評価額の6分の1または3分の1に、都市計画税の課税標準額を評価額の3分の1または3分の2とする特例措置です。
本来、住宅用地特例制度は「人の居住の用に供する家屋」に適用されるものです(地方税法349条の3の2)。ですが、空き家となり、居住の用に供されなくなったからといって、市町村が、積極的に住宅用地特例の適用を除外することは、ほとんど行われてきませんでした。
一方、空き家の所有者は、家屋を取り壊さず残しておく方が、住宅用地特例により固定資産税が安いので、老朽化しても、そのまま放置することが一般的でした。
このように、人が住んでいない管理状況の悪い家屋に対しても住宅用地特例が適用されてきたことが、空き家の除却や適正管理が進まない大きな要因の1つとなっていたのです。
そんな中、空き家対策が本格化します。空き家対策特別法が2014年11月に成立し、翌2015年5月26日に完全施行されました。
こうして、倒壊のおそれのある危険な空き家などを「特定空家等」として措置の対象とし、除却や修繕などの指導・勧告・命令、さらに行政代執行ができるようになりました。その1つとして、住宅用地特例制度から除外する法制度が整備されたのです。
特定空家と認定され、除却・修繕など必要な措置をとるよう助言・指導を受けたにもかかわらず改善されないと、次は勧告を受けます。勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例の適用が除外されます。
特定空家を住宅用地特例制度から除外する法制度の仕組みは、こうです。
空家法において、「国及び地方公共団体は、…市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする」と、国や地方自治体に義務づけました(空家法15条2項)。
「平成27年度税制改正の大綱」(2015年1月14日閣議決定)において、固定資産税・都市計画税につき、次のように決定しました
空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置を講ずる。
これを受け、地方税法の一部改正において、空家法14条2項の勧告を受けた特定空家等の敷地は、住宅用地特例制度の対象から除外されることになったのです。
特定空家として市町村から勧告を受け、住宅用地特例の適用対象から除外されたとしても、修繕など必要な措置を実施し、勧告が撤回されると、住宅用地特例の適用要件を満たす場合は、再び住宅用地特例を受けられます。
もちろん、建物を撤去し更地にした場合は、住宅用地でなくなりますから、住宅用地特例の再適用はありません。
勧告された措置を講じないと、次は勧告した措置をとるよう命令を受けます(空家法14条3項)。命令に違反すると50万円以下の過料に処されます(空家法16条1項)。
命令を受けても措置を履行しないときは、行政代執行により解体・撤去され、その費用が請求されることになります。
国は、空き家対策(空家等の発生の抑制、利活用、除却等の取組)をさらに強力に推進するため、「基本指針」と「ガイドライン」を改正しました(2021年6月30日)。
「基本指針」は、特定空家等に対する固定資産税等の住宅用地特例の取扱いについて、次のようにしています。
固定資産税等の住宅用地特例が、管理状況が悪く、人が住んでいない家屋の敷地に対して適用されると、比較的地価が高い地域においては当該家屋を除却した場合と比べて固定資産税等が軽減されてしまうため、空き家の除却や適正管理が進まなくなる可能性があるとの指摘が存在する。
空家等の中でも、特定空家等であって地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす場合には法に基づく措置の対象となるものであり、その除却や適正管理を促すことは喫緊の課題である。
以上を踏まえ、地方税法において、固定資産税等の住宅用地特例の対象から、法第14条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地を除くこととされている(地方税法第349条の3の2第1項等)。
ここまでの内容は、旧「基本指針」と基本的に同じなのですが、改正された新「基本指針」には、続けて次のような記載があります。
将来著しく保安上危険又は著しく衛生上有害な状態になることが予見される空家等についても、その所有者等に対し法第14条第2項の規定に基づく勧告を行うことが可能である。
つまり、現に著しく保安上危険または著しく衛生上有害な状態でなくても、将来そのような状態になることが予見される空家についても、幅広く特定空家等と認定し、所有者に法にもとづく勧告を行うことは可能だから、もっと積極的に勧告を行い、住宅用地特例の対象から除外するよう、市町村に求めているのです。
あわせて、新「基本指針」は、住宅用地の認定の厳格化も求めています。そもそも「人の居住の用に供する家屋の敷地」でないと住宅用地特例の適用は認められません。
今後は、空家法14条2項にもとづく勧告による住宅用地特例の解除とともに、住宅用地特例制度の厳密な運用から住宅用地特例の解除も進みそうです。空き家対策「基本指針」の改正について詳しくはこちらをご覧ください。
住宅用地特例の適用を受けられないと、実際どれくらい固定資産税が高くなるのでしょうか?
住宅用地特例は、固定資産税の課税標準額を評価額の6分の1または3分の1とし、都市計画税の課税標準額を評価額の3分の1または3分の2とする特例措置です。
したがって、住宅用地特例の適用がなくなると、固定資産税は最大6倍に、都市計画税は最大3倍になる計算です。
ただし、実際には、一気に固定資産税が6倍に増えたり、都市計画税が3倍になったりするわけではありません。負担調整措置等があるからです。
基本指針には、「当該家屋を除却した場合」について、次のような記載があります。
固定資産税等の住宅用地特例が適用されない場合の税額は、課税標準額の上限を価格の7割とするなどの負担調整措置及び各市町村による条例減額制度に基づき決定されることとなる。
つまり、固定資産税は、住宅用地特例の適用により評価額の6分の1(16.67%)となっていた課税標準額が、住宅用地特例が適用されない場合の課税標準額の上限は評価額の70%となるので、負担調整措置により最大4.2倍となります。
同様に、都市計画税は、住宅用地特例により評価額の3分の1(33.33%)となっていた課税標準額が、評価額の70%となりますから、実際は最大2.1倍です。
とはいえ、固定資産税や都市計画税が大幅にアップすることには違いありません。
空家法にもとづく勧告がなされると、住宅用地特例の適用を受けられなくなり、固定資産税や都市計画税が大幅にアップします。
何より、特定空き家は、いつ倒壊してもおかしくない危険な状態です。周囲に悪影響も与えます。被害が起きれば、損害賠償請求されることにもなりかねません。
老朽化した空き家は、修繕や解体など早めに対応することが大切です。特定空き家のリフォームや解体には、自治体の補助を受けられる場合があります。お住いの市町村に相談してみるとよいでしょう。
実家を相続して空き家のまま放置している場合は、特定空家と認定される前に、売却するなり、利活用するなり、早めの対応をおすすめします。
まずは「今の価値がどれくらいあるか?」から調べてみましょう。売却するか活用するかは、その結果をふまえて検討する方が判断しやすく、後悔することもありません。
\ いま売ったらいくら? /
公開日 2021-08-29 更新日 2023/06/13 20:51:49