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任意売却も、不動産業者に査定・売却を依頼する点では、通常の不動産売却と同じです。任意売却と一般的な不動産売却とで大きく異なるのは、売却価額やその配分につき、事前に全ての債権者や利害関係者の同意が必要、という点です。
任意売却の流れは、次のようになります。各段階で注意すべき点をまとめておきます。任意売却とは、どんな不動産売却か? についてはこちらをご覧ください。
任意売却は、一般的な不動産売却と同じように、不動産業者(宅建業者)に依頼します。その際に大事なのは、住宅ローンの返済が困難になったら早めに相談すること、任意売却の実績豊富な不動産業者に相談することです。
競売開始決定通知が裁判所から届き、慌てて相談するケースが多いのですが、債権者が競売を申立てる前に任意売却の手続きを始める方が、有利な条件で売却できる可能性が高いのです。
また、任意売却には、一般的な不動産売却の業務に加え、任意売却独自の専門性の高い業務が含まれます。任意売却の経験のない不動産業者では、任意売却は成功しません。
任意売却は、競売を回避するための最終手段ですから、時間とのたたかいです。迅速・確実に、できるだけ高く売却する必要があります。一般的な不動産売却以上に、不動産業者選びが重要なのです。
任意売却を任せる不動産業者を決めたら、媒介契約を締結します。
媒介契約には、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介があり、通常の不動産売却であれば、どのタイプの媒介契約とするかは売主が自由に決めてよいのですが、任意売却の場合は、基本的に「専任媒介契約」もしくは「専属専任媒介契約」です。任意売却は、債権者や利害関係者との交渉や調整があるため、窓口を一本化しておく必要があるからです。
債権者の意向によっては、複数の不動産業者と媒介契約することがあり、その場合は一般媒介契約となります。
例えば、不動産所有者が媒介契約する不動産業者に加えて、債権者の指定する不動産業者も売却活動に参加させる場合や、自己破産を申し立て、破産管財人がいくつかの不動産業者に売却を任せる場合です。個人の住宅の任意売却では、ほとんど関係ないでしょう。
任意売却することを債権者(抵当権者)に申し出て、全ての債権者や利害関係者から同意を得ます。
売却する不動産に設定されている抵当権など担保権は、全て解除しなければなりません。抵当権者は複数の場合もあります。税金を滞納して、差押えが入っている場合もあります。
担保権者だけでなく、保証人がいる場合は、売却後の残債務の支払いについて、保証人の同意を得る必要があります。
任意売却するには、このような全ての債権者・抵当権者・利害関係者の同意を得なければなりません。これを的確、迅速に行えるよう、媒介契約する不動産業者選びが大事なのです。
すべての債権者や利害関係者から同意を得られたら、販売活動の開始です。
売り出し価格の決定には、債権者(抵当権者)の同意が必要です。通常の不動産売却のように、売主の一存で決めることはできません(⇒一般的な不動産売却における売出価格の決め方)。
「いくら債権回収できたら抵当権を解除するか」を決めるのは、抵当権を設定している債権者ですから、売出価格を決めるのには、債権者(抵当権者)の同意が必要なのです。
任意売却も、販売活動の方法は、一般的な不動産売却の場合と同じです。レインズ(不動産業界のデータベース)に登録し、不動産情報サイトや折込チラシなどに掲載して、販売活動を行います。販売活動を通して任意売却物件であることが第三者に知られることはありません。
なお、すでに競売手続きが開始されている場合は、第三者に競売物件であることを知られます(⇒任意売却のメリット・競売のデメリット)。債権者から競売を申立てられる前に任意売却に着手すると、第三者の目を気にすることなく販売活動ができます。
債権者(抵当権者)が任意売却を認めたとしても、売れるまで、いつまでも待ってくれるわけではありません。一定期間が経過しても売却できそうにない場合は、債権者から競売が申立てられます。
競売開始決定がされ、競売手続きが進行する中で、任意売却を並行して行わなければならない場合もあります。そんなときは、競売の取下げができる期限までに任意売却を完了させないと、競売を回避できません。
任意売却は、迅速・確実に、債権者が同意できる価格で売却する必要があります。なかなか売れないからといって、価格を下げて売却することもできません。それだけに、不動産業者の販売力がポイントとなり、通常の不動産売却以上に、不動産業者選びが重要です。
購入希望者が現れたら、購入意思を証明する買付証明書(購入希望証明書)を提出してもらいます。買付証明書とは、買付金額や買付条件を記入し、署名捺印したものです。買付証明書を債権者に提出し、購入価格の承諾を得て、買受人を決定します。
あわせて、各債権者への配分金額と諸経費の控除額を記載した「配分案」を作成し、債権者の同意を取り付けます。この場合の債権者とは、抵当権など担保権を設定している法人や人のことで、カードローンなど無担保で借りた債権者は含みません。
任意売却では、売却代金の全額が債権者に渡るわけではありません。仲介手数料や抵当権抹消費用など売却に必要な経費は、売却代金から控除することが認められています。
仲介手数料など不動産売却に要する費用は、売主が支払うものですが、任意売却では、売主に費用の支払い能力がないため、売却価額(すなわち債権者への支払額)から控除が認められます。売却代金の配分方法や控除が認められる費用について詳しくはこちらをご覧ください。
売却価格とその配分について債権者の同意を得るのと並行して、売主と買主との間で売買契約を締結します。売買契約には、仲介する不動産業者が立ち合います。
売買契約の基本的な流れは、通常の不動産売却と同じですが、契約書の内容や手付金の扱いが一部異なります。そのため、売買契約の段階で、任意売却する物件であることが買主側に分かります。とはいえ、「ローンの支払いができずに売ることになったんだな」ということを買主に知られるだけで、任意売却物件だからという理由で、売買契約が取りやめとなることは通常ありません。
売買契約の締結において、一般的な不動産売却と任意売却とで異なるのは、次の3点です。
任意売却の売買契約書には、次の2つの特約を盛り込みます。これは、任意売却を行う売主を守るためのものです。
任意売却の売買契約書には、債権者等の同意が得られず抵当権等を抹消できない場合は、無条件で契約を解除できる白紙解除の特約を盛り込みます。「抵当権の抹消について債権者と合意が得られない場合は、契約を白紙解除できる」とする特約です(⇒解除条件付契約)。
任意売却する売主に、契約不適合責任を負う資力はありません。そのため、任意売却では、契約不適合責任を免除する特約を付けます。なお、契約不適合責任の免責については、普通の不動産売却でも特約を盛り込むのが一般的です。
土地の売買には実測売買と公簿売買がありますが、任意売却では公簿売買が原則です。後日測量を行い、登記簿上に記載された面積と実際の面積に差異が生じていたとしても、売買価額を変更できない旨を契約書に明記しておきます。
一般的な不動産売却では、売買契約時に、買主が売主に手付金を支払いますが、任意売却の場合は、買主が支払う手付金を、仲介する不動産業者が決済日まで預かります。その際、売主・買主・仲介業者の三者で、「手付金の預託に関する覚書」を交わします。
これは、買主の債権保全が目的です。決済日(手付金を差し引いた残りの金額を支払う日)までに、抵当権の抹消など売主の義務を履行できず売買契約が解除となったときには、手付金を買主に返還しなければならないからです。
任意売却の場合は、手付金の受け渡しが行われないこともあります。
売買契約日から決済日までは、およそ1ヵ月程度です。任意売却する不動産に居住中の場合は、その間に新居への引越しを完了させます。
ただし、「債権者の一部から抵当権抹消の承諾を得られなかった」とか「買主の側の住宅ローンの本承認がおりなかった」といった理由で、売買契約が白紙解除になることがあります。新居の賃貸契約や引越しは、これらをクリアした後で行うとよいでしょう。
決済は、買主が住宅ローンを借りる取引銀行で行うのが一般的です。買主の取引銀行からの融資実行金額と不動産業者が預かっている手付金を合計した金額を、事前に作成した配分案にもとづき配分し、各債権者の振込先に振り込みます。
抵当権の抹消、所有権の移転を行います。債権者が競売を申立てしている場合は、競売申立てを取下げます。
全て完了すると、実務上の任意売却は終了となります。
無事に任意売却が終了しても、売却代金で住宅ローンを完済できませんから、債務が残ります。もはやマイホームはありませんが、残債務は支払わなければなりません。
ただし、任意売却後の残債務は、債権者と話し合って、無理のない範囲で返済できるよう、分割返済にすることができますから、ご安心ください。
もしも、分割返済も難しいようなら、自己破産を申し立てることで、返済を免責されます。弁護士に相談するとよいでしょう。
任意売却は、一般の不動産売却の販売業務に加え、売却価額や配分額などについて、債権者や利害関係者の同意を取り付け、調整することが必要となります。しかも、競売を回避するために行うものですから、時間との勝負にもなります。
任意売却は、通常の不動産売却以上に、迅速・確実に、見込み価格で売却する必要があります。任意売却は、任意売却の経験豊富な不動産業者に相談・依頼することが大切です。
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公開日 2019-11-23 更新日 2023/08/23 11:34:28