※当サイトでは記事内にアフィリエイト広告を含む場合があります。
相続空き家を手放し、国に引き取ってもらうには、法定相続人の全員が相続を放棄するか、相続土地国庫帰属制度を利用する方法があります。
相続放棄は、すべての財産を引き継げなくなり、不要な土地のみを手放すということができません。また、法定の期限内に手続きをしないと、相続を承認したとみなされてしまいます。
親の財産を相続した後で、不要な実家のみを手放したいときは、相続土地国庫帰属制度を利用することになります。
では、相続土地国庫帰属制度を利用して、相続空き家を国に引き取ってもらうには、どうすればいいのか、詳しく見ていきましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地が不要な場合に、国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日からスタートした制度ですが、それ以前に相続した土地も対象となります。
鈴木さん(仮名)は、2020年10月に母親が亡くなり、実家を相続しました。しかし、県外に家があり、実家に戻って住むつもりもなかったので、売りに出したのですが、買い手は見つかりません。
空き家の維持管理には、固定資産税や水道光熱費などで年間10万円ほどかかります。
母親が亡くなって3年がたち、「このまま管理し続けるしかないのか…」と半ば諦めかけていたとき、相続土地国庫帰属制度のことを知ったのです。
相続土地国庫帰属制度を利用して、相続空き家(相続した不要な実家)を国に引き取ってもらうには、家屋を解体し、更地にする必要があります。建物があると、申請すら受け付けてもらえません。
解体費用は、自己負担です。さらに、国庫への帰属が承認されたら、管理費相当額として負担金を国に納めなければなりません。
鈴木さんの場合、建物の解体費・負担金あわせて約200万円となる見通しでした。年10万円ほどかかっている維持管理費の約20年分です。それでも鈴木さんは、「子どもに負担をかけるわけにはいかないので、国に引き取ってもらえるのはありがたい」と話します。
国は、引き取る土地について、「建物があってはいけない」ということのほかにも、多くの要件を定めています。
担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、隣地との境界が不明確で争いがある土地、なども申請することができません。
さらに、樹木や石灯籠などがあったり、瓦礫やコンクリート片が埋まっていたりする土地、勾配30度以上で高さ5m以上の崖があるとか、地割れや陥没などがある、鳥獣や病害虫がいる土地なども、引き取ってもらえません。
このように、土地の条件は複雑なので、相続土地国庫帰属制度を利用するときには、まず法務局に事前相談することをおすすめします。
法務局では、所有している土地が条件に合うか、国に引き渡すことができそうか、作成した申請書類や添付書類に漏れがないか確認してほしい、といった個別の具体的な相談をすることが可能です。
申請には建物がないことが前提ですが、事前相談の段階で建物が残っていてもかまいません。申請までに解体撤去すればよいので、とりあえず事前相談を申し込むとよいでしょう。事前相談は予約制です。「法務局手続案内予約サービス」Webサイトから予約できます。
申請には、土地1筆につき1万4千円の審査手数料が必要です。審査手数料は、申請が却下された場合でも返還されません。
国が国庫への帰属(引き取り)を承認すれば、負担金が必要になります。負担金は、宅地、農地、山林といった土地の種類、どのような区域にある土地かによって、金額が決まります。
例えば、市街地にある宅地であれば、面積に応じて算定式がきまっていて、約200㎡の宅地なら約200万円が目安です。市街化区域外にある宅地なら、面積にかかわらず原則土地1筆につき20万円です。
相続空き家を国に引き取ってもらうには、一時的に費用が発生しますが、相続人が複数いる場合、分担すれば、1人当たりの負担は抑えられます。公平に分担し、それぞれが相続した財産から支払うようにするのがよいでしょう。
相続土地国庫帰属制度を利用するには、土地の要件を満たす必要があります。相続した実家を国に引き取ってもらうためには、申請までに土地が要件を満たすようにしなければなりません。それには、手間も費用もかかります。
将来、相続土地国庫帰属制度の利用を考えるのであれば、相続が発生する前から、親子で準備を始めるのがよいでしょう。親が自宅に居住している場合は、建物の解体はできないとしても、ほかにできることはあります。
隣地との境界が明確になっているかをチェックし、隣地の所有者と境界争いがあれば早期に解決しておく必要があります。更地にする際の手間や費用を軽減するため、不要な家財は早めに処分し、庭木や庭石があるなら段階的に処分しておくことが大切です。
「自分の代で解決しないと、子や孫の大きな負担になりかねない」――こんな思いから、相続土地国庫帰属制度の利用を考える人が増えています。
相続土地国庫帰属制度は、相続した後で、不要な土地を国に引き取ってもらうことができます。ただ、引き取る土地の要件のハードルが高く、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。
この制度を利用すれば、実家を相続したものの、売却することも活用することもできず、どうしようもなくて困っている場合に、建物を解体して更地にし、土地が国の定める要件に適合すれば、国に引き取ってもらうことができます。
相続放棄以外に、不動産の所有権を放棄できる制度として、活用できますから、不要な相続空き家を持て余しているのであれば、利用を検討してみるとよいでしょう。
ただし、必ずしも国に引き取ってもらえるとは限りません。手間や費用もかかるので、あくまで最後の手段です。その前に、できることをやっておきましょう。
現在の資産価値を調べ、売却や活用方法を不動産業者と相談してみることをおすすめします。どうしても売却が難しい物件の場合は、売れにくい訳アリ物件を専門に買取している業者もありますから、そちらに相談し買取してもらう方法もあります。
\ 無料・簡単60秒 /
公開日 2021-02-19 更新日 2023/10/31 13:36:27