不動産売却の基本的な流れ
不動産売却の基本的な流れを知っていれば、見通しをもって売却活動を進めることができ、高値売却に結びつきます。
家・マンション・土地を売却するときの基本的な流れを見ておきましょう。
(1)査定依頼・販売価格の検討
不動産売却は、不動産業者に査定を依頼することから始まります。いくらで売れそうか、現在の価値を不動産業者に調べてもらうのです。
不動産業者に査定を頼めば、無料で査定してもらえます。
不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法もありますが、鑑定料が必要になります。個人の不動産売却は、不動産業者の査定で十分です。
査定結果から価格の相場が分かったら、売り出し価格を決め、不動産業者に売却を依頼します。
もちろん、不動産業者に頼まず、自分で買主を探して売ってもかまいません。不動産業者による買取という選択肢もあります。しかし、自分で買主を探すのは大変です。業者買取は価格が安くなります。不動産業者に売却を依頼し、買主を探してもらうのが一般的です。
なお、不動産業者のうち、売却を依頼できるのは、宅建業法(宅地建物取引業法)にもとづく宅建業の免許をもった宅建業者だけです。
査定を依頼し、売り出し価格を決めるときは、次の点に特に注意してください。
査定価格は売却を保証する価格でない
査定価格とは、「これぐらいで売れるだろう」と考えられる価格であって、「この価格で必ず売れる」と保証する価格ではありません。
査定価格は、売り出し価格を決める上での目安です。いくらで売却できるかは、実際に売り出してみないと分かりません。とはいえ、売却実績の豊富な不動産会社なら、ほぼ査定価格で売却できます。だからこそ、査定を依頼する不動産会社選びが大切です。
複数の不動産業者の査定を比較する
不動産業者によって、得意分野や得意エリア、顧客(購入希望者)情報が異なります。ですから、複数の業者に査定を依頼し、結果を比較することが大切です。
査定結果を比較するときに重要なのは、査定価格が高いか低いかより、その価格とした根拠や売却プランです。契約を取ろうと高い価格を付ける業者がいるので注意が必要です。
売り出し価格の設定が不動産売却の成否を決める
不動産売却は、査定価格より少し高めの価格で売り出し、様子を見ながら価格調整するのが一般的ですが、高すぎる価格で売り出すと、不動産売却は失敗します。売れない状況が長く続くと「売れ残り物件」としてイメージが定着して売れにくくなり、最後は安く買い叩かれてしまいます。
売る側は「相場より高く売りたい」と思いますが、買う側は「できるだけ安く買いたい」と思っています。市場価格というものがありますから、不動産業者と相談し、3ヵ月以内に売り抜けられるよう販売価格を設定するのが鉄則です。
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(2)媒介契約の締結
売却を依頼する不動産業者を決めたら、不動産業者と媒介契約を結びます。媒介とは、仲介のことです。
媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」があり、どのタイプの媒介契約とするかは売主が選択できます。それぞれの特徴とメリット・デメリットを押さえておきましょう。
3つの媒介契約の特徴と比較
契約形態 | 売主 | 不動産業者 |
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一般媒介 |
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専任媒介 |
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専属専任 |
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※レインズとは、指定流通機構が運営する不動産業界の物件情報データベースです。
3つの媒介契約の違いとメリット・デメリットについて詳しくはこちらをご覧ください。
どの媒介契約が売主に有利か?
どのタイプの媒介契約を結ぶかによっても、高く早く売れるかどうかに影響します。
3種類の媒介契約のうち、売主に最も有利なのはどのタイプか、一概には言えませんが、基本的な考え方のみ紹介しておきます。
- 売主にとって、専属専任媒介にするメリットは特にありません。一般媒介か専任媒介を選択するとよいでしょう。
- 一般媒介とするか専任媒介とするかの判断は、物件により選択するのが賢い選択方法です。基本的には、売れやすい物件は一般媒介契約、それ以外は専任媒介契約と考えるとよいでしょう。
どの媒介契約を選択すればいいか詳しくはこちらをご覧ください。
(3)販売活動
媒介契約を締結すると、不動産業者は販売活動を開始します。買主を見つけられるか、売主の希望する価格で売れるか、不動産業者の力量が最も試されるところです。
媒介契約するまでは調子いいことばかり言いながら、契約すると誠実に販売活動しない業者もありますから、注意が必要です。
不動産業者に「任せっきり」はダメ
不動産業者に「任せっきり」ではダメです。販売活動の状況について、売主としても積極的に確認する姿勢が必要です。
例えば、売れにくい物件や価格の安い物件は、問い合わせがあったら紹介するだけ、ということがあります。
なぜ、そうなるかというと、不動産業者が得られる報酬(仲介手数料)が、売却価額の一定割合の成功報酬だからです。
売れるまでは、広告費や人件費など販促費用は業者の持ち出しです。売れても、価格が安いと報酬も安くなります。したがって、コストに見合う報酬が入りそうになければ、手を抜く場合があるのです。
不動産業者の販売活動チェックポイント
それでは、売主として、どんなことを確認すればいいのか、まとめておきましょう。
- 居住中の物件なら内見があれば分かりますが、そうでなければ反応が分かりません。問い合わせや内見の状況について、報告を求めましょう。
- 内見があったにもかかわらず購入申込に至らなかった場合は、その理由が重要です。例えば、価格の問題なら、販売価格を下げるかどうかの参考になります。
- 広告活動では、新聞チラシ、ポスティング、HPへの掲載、ポータルサイトへの掲載などの状況も確認しましょう。
- レインズのダウンロード数や競合物件の状況を把握することも大切です。レインズ登録情報については、売主自身も専用サイトで確認できます。
誠実に販売活動をしてくれない場合は、その業者との専任・専属専任媒介契約を解約し、別の業者と媒介契約することも可能です。
(4)購入の申込み
購入を検討する買手候補が現れると、物件を案内して、気に入ってもらったら、購入申込書を書いてもらうことになります。
購入申込書の様式は仲介する不動産業者によって異なりますが、一般的には、①購入不動産の概要、②購入検討者の住所・氏名、③購入希望価格など諸条件、について記入するようになっています。
売主としては、購入希望価格や条件が気になるところでしょうが、大事なのは次の3点です。
購入申込書のチェックポイント
- だれが書いたか
- 条件が詰まっているか
- 丁寧に書かれているか
不動産業者の代筆だったり、とりあえず申込書を書いただけ、といった場合は、購入申込みをキャンセルすることが多くあります。
それに対して、丁寧に書かれた購入申込書は、買手が本気で購入を検討し、価格や条件をしっかり詰めているケースが多いようです。実際、購入を真剣に考えている人ほど、丁寧に書くものです。
仮に、あなたが購入する場合を考えてみてください。「何としても買いたい」「自分に売ってもらいたい」と考えるなら、購入申込書を真剣に丁寧に書くでしょう。
売買契約にまで至りそうかを見極めることが大事
丁寧に書かれた購入申込書が出てきた場合でも、買手に購入する能力(支払い能力)があるかどうかの確認が大事です。仲介する不動産業者に、買手の年収や属性、ローン審査の見通しなどを確認し、シビアに判断しなければいけません。
購入申込書が出ると「買手が見つかった」と喜び、「売れた」と思いがちですが、まだ、売買契約したわけではありません。他に良い物件が見つかれば、買主は簡単に乗り換えます。
購入申込書が出たときに大切なのは、「この人と本当に売買契約に至るか」を見極めることです。
(5)売買契約・手付金の授受
買主が決まったら、売買契約を締結します。売買契約には、契約書、重要事項説明書、物件報告書、設備表、支払約定書、領収書などが必要となりますが、書類は不動産業者が作成し、契約の場で説明してくれます。
ただし、売主も事前に書類をチェックすることが大切です。疑問に思う点は、契約書に署名捺印する前に、しっかり確認しておきましょう。
そのほか、売買契約にあたって知っておいたらよいこと、をまとめておきます。
手付金は少なすぎても高すぎても問題
売主は契約時に手付金を受け取ります。手付金は売買代金の一部で、売主と買主の合意によって決められますが、一般的には売買代金の10~20%程度といわれます。
手付金の額は、少なすぎても高すぎても問題があります。
買主は手付金を放棄すれば契約を解除できるので、手付金が低すぎると、買主に「もっと良い物件」が出てきたときに契約解除となるリスクがります。かといって、高すぎるのも現実的ではありません。
例えば、売買代金が5,000万円で手付金が10%とすると、手付金額は500万円です。たいてい不動産を購入する人は、頭金程度の自己資金と銀行ローンで資金計画を立てますから、手付金が高額だと払えません。
そのため、実際には、手付金を売買代金の5~10%程度とするケースが多いようです。
契約前に買主のローン審査が通っているか確認
契約の前に、買主のローン審査が通っているかの確認が必要です。
売買契約書に、「買主のローンの審査が通らなかった場合は、契約を白紙解除する」という特約(ローン特約)を付けるのが一般的です。ローン特約で契約解除となると、契約時に受け取った手付金を返還しなければなりません。契約書に添付した収入印紙代も無駄になってしまいます。
買手の住宅ローンの事前審査が通っているか確認後に、売買契約することをおすすめします。
不動産会社への仲介手数料の支払い
売買契約が成立すると、不動産会社は仲介手数料を売主に請求できるようになります。
ただし、売買契約の時点では、まだ取引は完了していませんから、仲介手数料は、契約時に半金、決済・引渡し時に残りを支払うのが一般的です。
(6)物件引渡し・残代金決済
残代金を受け取り、引渡し・所有権移転登記が済んだら、不動産の売却手続きは完了です。不動産会社に仲介手数料の残金を支払います。
まとめ
不動産売却の基本的な流れを押さえておくと、見透しを持った売却活動ができ、そのことが満足のいく売却に結びつきます。
不動産売却で最も大事なのは、査定と売却を依頼する不動産業者選びです。不動産売却が成功するかどうかは、媒介契約する不動産業者次第といっても過言ではありません。
不動産業者選びで失敗しないよう、不動産業者に査定を依頼するときは、一括査定「イエイ」の利用をおすすめします。
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