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空き家対策特別措置法により「特定空家等」と認定されると、市町村から行政指導や行政処分を受けます。どんな状態の空き家が、特定空家と認定されるのか、詳しく解説します。
まず、空家法が対象とする空き家とはどんな状態のものをいうのか見ておきましょう。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)は、平成26年(2014年)11月に成立し、翌2015年5月に全面施行されました。
空家法により、市町村は、空家等の立入調査(空家法9条)、空家等の所有者に関する情報の利用(空家法10条)、特定空家等の所有者に対し、修繕や除却など必要な措置をとるよう、指導・勧告・命令ができるようになりました(空家法14条)。
空家法は、法の対象とする空家等と特定空家等について、次のように定めています。まずは、条文をざっとご覧ください。
空家法が対象とする「空家等」「特定空家等」について、詳しく見ていきましょう。
空家等とは「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」及び「その敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」と定めています(空家法2条1項)。
以下、国土交通省の「基本指針」(空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針)を参考に説明します。
建築物とは、建築基準法2条1号の建築物と同義で、土地に定着する工作物のうち、屋根・柱・壁を有するもの、それに付属する門・塀などのことです。
「これに付属する工作物」とは、建築物に付属する工作物で、袖看板・ネオン看板などが該当します。門・塀以外の工作物です。
「土地に定着する物」には、庭木のほか、雑草等も含まれます。
敷地を含めて、すなわち建築物・工作物・敷地を一体のものとして、空家等と定義されていることに注意してください。
さらに「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」とされています。
「居住その他の使用がなされていないこと」とは、「人の日常生活が営まれていない、営業が行われていないなど、当該建築物等を現に意図をもって使い用いていないことをいう」とされています。
「居住その他の使用がなされていない」ことが「常態である」とは、建築物等が長期間にわたって使用されていない状態です。基本指針では「概ね年間を通して建築物等の使用実績がない」ことを1つの基準としています。
「不使用が常態」というのは、客観的にそのように認められるということであり、所有者の主観的意思は決定的要素とはなりません。人の出入り実績、電気・水道・科すなどの使用実績、外観、登記簿・住民票の内容などを総合的に勘案して判断します。
ですから、所有者が「使用している」と主張しても、その様子が確認できない場合は、空家等と判断されます。
使用と管理は違います。使用とは、住居や店舗として建築物を現に意図をもって使い用いることです。年に数回訪れて外観を見たり換気をしたりする程度の場合は、管理はされているけれども使用はされていないため、空家等と判断されます。
逆に「不使用が常態」でなければ、空家等に該当しません。例えば、次のような場合は、空家法の空家等に該当しません。
特定空家等とは、空家等のうち、次の4つの状態のいずれかの状態にあると認められるものをいう、と定義されています(空家法2条2項)。
空家等と特定空家等の違いは、空家等は、単に「使用がなされていないことが常態であるもの」にすぎないのに対し、特定空家等は、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」等にあると認められるものです。
そのため、空家等は、空家法の「立入調査」(空家法9条)や「所有者に関する情報の利用等」(空家法10条)の規定が適用されるにすぎないのに対し、特定空家等は、所有者に対し、除却・修繕などを行うよう、助言・指導、勧告、命令をする対象となります(空家法14条)。
必要な措置を講じるよう勧告を受けると、固定資産税や都市計画税の住宅用地特例を受けられなくなります。
したがって、特定空家等と認定されるかどうかは、空き家の所有者にとって極めて重要です。
問題は、法に規定する「著しく保安上危険となるおそれのある状態」や「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」などが、具体的にどういう状態なのか、ということです。
特定空家の判断基準については、国土交通省が、ガイドライン(特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針)において示しています。そこで、ガイドラインを参考に、特定空家とはどんな状態の空き家をいうのか、ご紹介していきます。
その前に、1つ大事なことをお伝えします。
国土交通省は、2021年6月30日、空き家対策を強化するため、基本指針とガイドラインを改正しました。改正ポイントの1つが、特定空家等の判断基準に関わることです。
空家法は、最初に条文をご紹介したように、特定空家等とは「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」や「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」と認められる空家等と規定しています(空家法2条2項)。
改正された基本指針とガイドラインは、この保安上危険・衛生上有害となるおそれのある状態というのは、現に著しく保安上危険・衛生上有害な状態の場合だけでなく、将来そのような状態になることが予見される場合も含むことを明確にしました。
実は、旧ガイドラインにも「将来そのような状態になることが予見される場合を含む」ことは、かっこ書きで記載されていたのですが、それを前面に押し出してきたのです。
もっと広範に特定空家等と認定し、法に基づく措置を行えるようにすることがねらいです。今後は、特定空家と認定されるケースが増えてきそうです。
それでは、改正された新ガイドラインを参考に、どんな状態の空き家が特定空家と認定され、法に基づく措置の対象となるのか、具体的に見ていきましょう。
「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」とは、例えば、次のような状態です。
具体的にどのような場合が「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」に該当するかは、ガイドラインを参考にしつつ、個別具体的に判断することになります。
ガイドラインには、次のような考え方の参考例が示されています。一例をご紹介します。
「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」は、「建築物・設備等の破損等が原因の場合」と「ごみ等の放置・不法投棄が原因の場合」があります。
「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」は、「既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態になっている場合」と「周囲の景観と著しく不調和な状態である場合」があります。
「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」は、「立木が原因の場合」「空家等に住みついた動物が原因の場合」「建築物等の不適切な管理が原因の場合」があります。
どんな状態の空き家が特定空家と認定されるのか、特定空家の判断基準について、おもなポイントをご紹介しました。
実家を相続して空き家のまま放置している場合は、特定空家と認定される前に、売却するなり、利活用するなり、早めの対応をおすすめします。
まずは「今の価値がどれくらいあるか?」から調べてみましょう。売却するか活用するかは、その結果をふまえて検討する方が判断しやすく、後悔することもありません。
\ いま売ったらいくら? /
【参考】
・国土交通省「基本指針」(空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針)
・国土交通省「ガイドライン」(特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針)
公開日 2021-08-23 更新日 2023/06/13 20:51:49