競売開始決定通知が届いたら? 競売を止めることはできるのか?

競売手続

 

裁判所から「競売開始決定通知」が届いたときは、ただちに競売を回避するための手続きをする必要があります。

 

裁判所が競売開始を決定したからといって、すぐに競売入札が実施され、売却、強制退去となるわけではありませんが、対応できる時間はあまり残されていません。

 

ここでは、不動産競売手続きの流れと、競売開始決定後に競売を中止・回避する方法について、見ていきましょう。

 

 

不動産競売手続きの流れ

債権者(抵当権者)は、債務者に返済能力がないと判断すると、債権を回収しようと抵当権を実行します。それが競売です。

 

不動産競売の大きな流れは、次のようになります。

 

  1. 競売開始決定
  2. 競売不動産の現況調査
  3. 配当要求終期の公告
  4. 競売入札

 

競売手続きの流れを詳しく見ていきましょう。

 

担保不動産競売開始決定通知が届く

債権者(抵当権者)が担保不動産の競売を裁判所に申し立てると、裁判所は、申立書を審査し、問題がなければ競売手続の開始を決定します。

 

裁判所が競売開始決定をすると、担保不動産の所有者のもとに「担保不動産競売開始決定」という通知が送られてきます。

 

競売開始決定通知とは、債権者のために担保不動産を差し押さえ、競売手続きに着手することを告げる裁判所からの通知です。

 

競売不動産の現況調査

競売開始決定から1ヵ月以内(遅くとも3ヵ月以内)に、裁判官から調査命令を受けた執行官と評価人(不動産鑑定士)が、競売不動産の現況調査のために訪問してきます。

 

この調査は、裁判所による強制力をもった調査ですから、拒否することはできません。

 

執行官が、不動産の占有状態や権利関係を調査して現況調査報告書を作成し、評価人が、評価額を鑑定し評価書を作成し、裁判所に提出します。

 

裁判所は、現況調査と評価人の評価にもとづいて、競売不動産の入札基準となる価額(売却基準価額)を定めます(民事執行法第60条1項)

 

売却基準価額は、時価の60~70%程度といわれ、その8割以上で入札すればよいため、競売は売却価格が安くなるのです(⇒詳しくはこちら

 

配当要求終期の公告

配当要求終期の公告とは、「この不動産はまもなく競売にかけるので、競売を申し立てた債権者以外の債権者で配当を受け取りたい人は、いついつまでに申し出てください」と告知する手続きです。

 

無担保債権であっても、裁判所が妥当と認める債権者であれば、担保権を設定している債権者が債権回収した後で、競売による売却代金が残っていれば、配分を受けられます。

 

配当要求終期の公告は、競売開始決定した不動産を裁判所の掲示板に掲示して行います。債権者だけでなく、誰でも見ることができます。

 

そのため、配当要求終期の公告がなされると、不動産業者が「任意売却をしませんか?」とアプローチしてくるのです。高利の貸金業者や経営コンサルタントを名乗る人物などが、悪意を持って接触してくることもありますから、注意が必要です。

 

競売入札

不動産競売は、通常「期間入札」という方法が採られます。期間入札とは、裁判所が定めた期間内に入札を受け付け、後日開札を行って落札者を決める方法です。

 

期間入札の公告

期間入札にかける不動産は、入札期間が始まる期日の2週間前までに、裁判所にて期間入札の公告が出されます。

 

期間入札の公告後、裁判所は、競売不動産に関する資料を閲覧室などで閲覧できるようにします。不動産現況調査で作成された「現況調査報告書」と「評価書」、これらを基に作成される「物件明細書」の3つの資料で、「3点セット」と呼ばれます。

 

これらの資料(3点セット)は、不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)で公開され、誰でも閲覧できる仕組みになっています。このことは、あなたの不動産が差押えられ競売にかけられたことが、周囲に容易に知られることを意味します。

 

期間入札

期間入札の公告後、実際に期間入札が開始されます。東京地裁の場合、期間入札の期間は1週間です。

 

開札

入札期間が終わると、あらかじめ公告していた開札期日に開札が行われます。一番高い金額を入札した人が、落札者(最高価買受申出人)として決定します。

 

売却許可決定

落札者(最高価買受申出人)が決まると、最高価買受申出人に売却するか否かを裁判所が決定します。不動産を買い受ける資格がない場合など売却が許可されないことがありますが、問題がなければ売却が許可されます。

 

代金納付・所有権移転

裁判所が定めた代金納付期限日までに落札代金や登録免許税などを納付することで、所有権が買受人に移転します。

 

代金が納付されると、裁判所書記官が法務局へ所有権移転登記を嘱託します。

 

法的には代金納付日(所有権移転日)以降、競売物件は、新しく所有者となる買受人の物となります。買受人との間に合意なく居続けると、強制執行により退去させられ、強制執行費用や家賃相当額の損害賠償金などを請求される可能性もあります。

 

競売売却代金の配分

裁判所が、競売の売却代金を各債権者に配分します。この期日を「配当期日」といいます。

 

配当期日を知らせる「配当期日呼出状」が、裁判所から債務者に届きます。

 

売却代金が、全ての債権者の持つ債権金額より上回っていれば、剰余金として債務者に配分されますが、債権金額が低いか、よほど高額で落札されない限り、余剰金が発生することはありません。

 

競売開始決定後に競売を中止・回避するには?

裁判所から競売開始決定通知が届いた後でも、競売を回避することは可能です。

 

競売の開始決定後に競売を中止・回避するには、個人民事再生任意売却の2つの方法があります。

 

裁判所に個人民事再生を申し立てる

住宅ローンを滞納して自宅が競売にかけられたときは、個人民事再生を申し立て、裁判所に競売中止命令を出してもらうことで、競売の進行を止めることができます。

 

個人民事再生の再生計画が認められれば、自宅を売却することなく生活の再建が可能です。

 

ただし、個人民事再生は、多重債務に陥り、住宅ローン以外の債務を整理すれば、住宅ローンを支払うことができるような場合に利用できます。住宅ローンをカットできるわけではありません。

 

個人民事再生は、弁護士に相談します。

 

債権者に任意売却を申し出てる

任意売却を債権者に申し出て、調整がつけば、債権者に競売の申立てを取り下げてもらうことができます。

 

一般的に、債権者にとっても任意売却の方が競売に比べてメリットが大きいので、競売申立て後でも、交渉次第で任意売却が可能なのです。

 

ただし、債権者との信頼関係が崩れてしまっていると、任意売却に応じてくれないこともあります。また、任意売却に応じる条件として、競売申立てに要した費用を事前に支払うよう求められ、その費用が高額なため支払えず、任意売却ができなくなることもあります。

 

なお、任意売却に合意しても、競売の申立てを取り下げない債権者もいます。その場合は、競売手続きの進行に並行して、任意売却手続きを進めることになります。競売により売却されてしまう前に、任意売却を完了させる必要があり、時間とのたたかいです。

 

いずれにしても、任意売却を申し出たからといって、必ず競売を回避できるわけではありません。競売の申立てを取下げるかどうかは、債権者次第です。柔軟に対応してくれる債権者であっても、入札・開札の期日が近くなと、競売申立ての取下げは困難となります。

 

競売開始決定後に任意売却を行う場合は、早く着手することが大事です。

 

任意売却は、不動産業者に相談します。その場合、任意売却に詳しく、任意売却の経験・実績豊富な不動産業者に相談することが大事です。

 

任意売却を申し出て競売を回避できる期限

裁判所が競売開始決定をした後でも、競売が実施され、売却代金が納付されるまでは、法律上、競売申立の取り下げは可能です。

 

競売開始決定から実際に競売入札が行われるまでには、だいたい6ヵ月程度です。それ以上かかる場合もあります。

 

競売開始決定通知が届いた時点なら、対応は急がなければなりませんが、まだ日はあります。諦めることはありません。

 

とはいえ、任意売却には、すべての利害関係者の権利関係を調整して合意を得るための期間、その後の売却活動の期間が必要です。短く見積もっても、1ヵ月程度は要します。手遅れにならないよう着手することが大切です。

 

個人民事再生と任意売却のメリット・デメリット比較

個人民事再生と任意売却のメリット・デメリットを比較しておきます。

 

個人民事再生は条件があり、選択できるケースが限られます。競売開始決定後に競売を回避するには、任意売却を債権者に申し出て、競売申立てを取下げてもらうのが、一般的な方法です。

 

個人民事再生 任意売却
対象 多重債務で、住宅ローン以外の債務を整理すれば住宅ローンの返済が可能な場合。 住宅ローンを滞納して期限の利益を喪失し、不良債権化した場合。
強制力 裁判所に申立て、法的強制力で実施。 債権者や利害関係者との合意にもとづき実施。
住居 そのまま自宅に住み続けることができる。 自宅を売却するので転居しなければならない。ただし、賃貸で住むことを前提に買主を探すこともできる。
依頼 弁護士 不動産業者
費用 弁護士費用が必要。 不動産業者への仲介手数料は売却代金から出せる。

 

まとめ

裁判所から競売開始決定通知が送られて来たら、速やかに専門家に相談することが大切です。

 

競売を回避する方法は2つあります。1つは、弁護士に相談して、個人民事再生を申し立てる方法。もう1つは、不動産業者に相談して、任意売却する方法です。

 

個人民事再生は、自宅を失わずに住み続けることができますが、対象となるケースが限られます。一般的には、任意売却を選択することになります。

 

競売開始決定通知が届いて放置していると、裁判所によって競売が実施され、強制退去させられます。裁判所から競売開始決定通知が送られて来たときは、迅速な対応が必要です。

 

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