譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例

譲渡損失が生じたときの特例

 

不動産を売却すると、いつでも売却益が発生するとは限りません。損失が生じることも多くあります。

 

マイホームを売却して譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得や事業所得など他の所得と相殺することができます。

 

これを「譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」といいます。詳しく見ていきましょう。

 

譲渡損失が出た場合の2つの特例は、2019年12月31日までの自宅の売却あるいは買い換えが対象です。2018年度(平成30年度)税制改正大綱(2017年12月22日閣議決定)で、2年延長されました。

 

 

自宅を売却して譲渡損失が生じたときに適用できる特例

譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例が適用できるのは、売った年の1月1日において所有期間が5年を超えるマイホームを売却して譲渡損失が生じ、次の2つのケースに該当する場合です。

 

 

売却した年に相殺する(他の所得から控除する)ことを「損益通算」といいます。控除しきれなかった分については、翌年以降3年間繰り越して相殺することができ、これを「繰越控除」といいます。

 

つまり、売却した年を含めて最長4年間にわたり、損失を他の所得と相殺できるという制度です。なお、所得が3,000万円を超える年がある場合は、その年については適用されません。

 

通常、不動産を売却して生じた損失は、他の所得と損益通算(相殺)できません。損益通算できるのは、同じ年に売った他の不動産の譲渡所得だけです。それを他の所得と相殺できるようにしたのが、この特例です。

 

退職後より現役時代に利用するとメリットが大きい

マイホームを売却すると譲渡損失が出そうな場合は、定年退職後にマイホームを買い換えるより、現役時代の給与所得が高いときに買い換える方が、税金面で有利です。

 

具体例で考えてみましょう。

 

譲渡損失が2,400万円発生する場合を考えます。
現役時代の年間給与所得が600万円、退職後の年間所得が200万円として、比較してみましょう。

 

現役時代に自宅を売却する場合
  • 売却した年

    所得600万円-譲渡損2,400万円=-1,800万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 2年目

    所得600万円-1,800万円=-1,200万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 3年目

    所得600万円-1,200万円=-600万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 4年目

    所得600万円-600万円=0
    ⇒所得税ゼロ

譲渡損失2,400万円は全額、給与所得から控除できます。

 

定年退職後に自宅を売却する場合
  • 売却した年

    所得200万円-譲渡損2,400万円=-2,200万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 2年目

    所得200万円-2,200万円=-2,000万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 3年目

    所得200万円-2,000万円=-1,800万円
    ⇒所得税ゼロ

  •  

  • 4年目

    所得200万円-1,800万円=-1,600万円
    ⇒所得税ゼロ

所得税は同じく4年間ゼロですが、損益通算できるのは最長4年ですから、譲渡損失2,400万円のうち1,600万円が、所得から控除しきれません。

 

住宅ローンのある自宅を売却して譲渡損失が出た場合の特例

住宅ローンが残っているマイホームを、住宅ローンの残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたとき、一定の要件を満たせば、譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。

 

さらに、その年に損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

 

これを「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」といいます。

 

この特例は、新たにマイホームを購入しない場合でも適用できます。例えば、自宅を売却して、賃貸マンションに住む場合や、実家に戻って住む場合に利用できます。

 

特例の適用要件

売却価額が住宅ローン残高を下回っていることが適用要件です。

 

[売却価額]<[住宅ローン残高]

 

つまり、マイホームを売っても、その売却代金で住宅ローンを完済できない場合に適用できます。住宅ローン残額から売却価額を差し引いた金額が、損益通算の限度額となります。

 

主な適用要件
  • 売った年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
  • 譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
  • マイホームの譲渡価額が上記の住宅ローンの残高を下回っていること。
  • 親子・夫婦間など特別関係者への譲渡でないこと。

 

参考事例

6,000万円で購入したマイホームを2,000万円で売却したとします。
住宅ローン借入金は5,000万円、売却時のローン残高は3,000万円とします。

 

住宅ローンのある譲渡損失

 

  • 譲渡損失の額

    =売却代金-購入代金
    =2,000万円-6,000万円
    =-4,000万円

  •  

  • 損益通算の限度額

    =借入金残高-売却代金
    =3,000万円-2,000万円
    =1,000万円

 

この場合、1,000万円が特定居住用財産の譲渡損失の金額となり、損益通算できる金額です。

 

自宅の買い換えで譲渡損失が出た場合の特例

マイホーム(譲渡資産)を売却して、新たにマイホーム(買換資産)を購入した場合、譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たせば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

 

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

 

これを「居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」といいます。

 

この特例は、自宅を売却して賃貸マンション等に住むのでなく、住宅ローンを組んでマイホームを買い換える場合に利用できます。買い換えたマイホームの住宅ローン控除との併用も可能です。

 

住宅ローン控除を併用する場合、この特例により所得税がゼロになる間は、住宅ローン控除を適用する意味はありませんが、譲渡損失の相殺が終われば、住宅ローン控除による所得税の還付が始まります。

 

特例の適用要件

譲渡資産に住宅ローン残額があることは要件としていませんが、新たに住宅ローンを組んでマイホームを購入することが適用要件となります。

 

主な適用要件
  • 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えていること。
  • 買換資産を取得した年の12月31日において、買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。
  • 売却した年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に、床面積が50㎡以上の家屋を取得すること。
  • 買換資産を取得した年の12月31日までの間に、居住の用に供すること、または供する見込みであること。
  • 親子・夫婦間など特別関係者への譲渡でないこと。

 

まとめ

マイホームを売却して譲渡損失が生じたとき、売却代金で住宅ローンを完済できない場合、新たに住宅ローンを組んでマイホームを買い換える場合には、その譲渡損失を最長4年間、他の所得と相殺できます。

 

要件を満たす場合は、確定申告することで税金の負担を減らせます。

 

不動産売却を依頼する不動産業者を選ぶときは、売却したときの税金についても詳しい不動産業者や、税理士と連携しやすい不動産業者を選ぶとよいでしょう。

 

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