自宅売却で譲渡損失だったら損益通算・繰越控除の特例

マイホームを売却して譲渡損失が生じた場合の損益通算・繰越控除の特例

マイホームを売却して譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たせば、譲渡損失を他の所得と損益通算したり、翌年以降の所得から控除できる特例があります。

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マイホームの売却の場合には、譲渡益に対してだけでなく、譲渡損失が生じた場合についても課税の特例があります。ここでは、マイホームを売却して譲渡損失が生じた場合の損益通算・繰越控除の特例について見ていきます。

 

譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例とは?

マイホームを売却して譲渡損失が生じた場合には、一定の要件を満たせば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。これを「損益通算」といいます。

 

さらに、その年に損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除することができます。これが「繰越控除」です。つまり、売却した年を含めて最長4年間にわたり、損失を他の所得と相殺できます。

 

この2つを合わせて「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。

 

通常、不動産を売却して損失が生じても、他の所得と損益通算(相殺)することはできません。損益通算できるのは、同じ年に売った他の不動産の譲渡所得だけです。他の所得との相殺を認めたのが、この特例です。

 

ただし、どんな場合でも、マイホームを売却して生じた譲渡損失であれば「損益通算・繰越控除の特例」を適用できるわけではありません。2つのケースに限られます。

 

「譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」を適用できる 2つのケース

次の2つの場合に、一定の要件を満たせば、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用できます。

 

  • 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
  • マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

住宅ローンが残っている自宅を売却して譲渡損失が生じた場合の特例

住宅ローンが残っているマイホームを、住宅ローンの残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたとき、一定の要件を満たせば、譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。その年に損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

 

これを「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」といいます。

 

特例の適用要件

売却したマイホームに償還期間10年以上の住宅ローン残高があり、売却価額が住宅ローン残高を下回っていることが適用要件です。

 

[売却価額]<[住宅ローン残高]

 

つまり、マイホームを売っても、その売却代金で住宅ローンを完済できない場合に適用できます。住宅ローン残額から売却価額を差し引いた金額が、損益通算の限度額となります。

 

主な適用要件としては、次のものがあります。

 

主な適用要件
  • 売った年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
  • 譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
  • マイホームの譲渡価額が上記の住宅ローンの残高を下回っていること。
  • 親子・夫婦間など特別関係者への譲渡でないこと。

 

特例の適用が除外されるケース

合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ「繰越控除」が適用できません。

 

次の場合は、損益通算および繰越控除の両方が適用できません。

この特例と住宅借入金等特別控除は併用できます。

 

参考事例

6,000万円で購入したマイホームを2,000万円で売却。
住宅ローン借入金は5,000万円、売却時のローン残高は3,000万円でした。

 

住宅ローンのある譲渡損失

 

  • 譲渡損失の額
    =売却代金-購入代金
    =2,000万円-6,000万円
    =-4,000万円
  •  

  • 損益通算の限度額
    =借入金残高-売却代金
    =3,000万円-2,000万円
    =1,000万円

 

この場合、1,000万円が特定居住用財産の譲渡損失の金額となり、損益通算できる金額です。

 

この特例は、新たにマイホームを購入しない場合でも適用できます。例えば、自宅を売却して、賃貸マンションに住む場合や、実家に戻って住む場合にも利用可能です。

自宅の買い換えで譲渡損失が生じた場合の特例

マイホーム(旧居宅)を売却して新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合に、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じた場合には、一定の要件を満たせば、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

 

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡した年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

 

これを「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」といいます。

 

特例の適用要件

新たに償還期間10年以上の住宅ローンを組んでマイホームを買い換えることが適用要件となります。

 

主な適用要件
  • 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えていること。
  • 買換資産を取得した年の12月31日において、買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。
  • 売却した年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に、床面積が50㎡以上の家屋を取得すること。
  • 買換資産を取得した年の12月31日までの間に、居住の用に供すること、または供する見込みであること。
  • 親子・夫婦間など特別関係者への譲渡でないこと。

 

特例の適用が除外されるケース

次の場合には繰越控除が適用できません。

  • 旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合は、500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません。
  • 繰越控除を適用する年の12月31日において新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンがない場合は適用できません。
  • 合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。

 

次の場合には、損益通算および繰越控除の両方が適用できません。

この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できます。

退職後より現役時代に利用するとメリットが大きい

マイホームを売却すると譲渡損失が出そうな場合は、定年退職後にマイホームを買い換えるより、現役時代の給与所得が高いときに買い換える方が、税金面で有利です。

 

具体例で考えてみましょう。

 

譲渡損失が2,400万円発生する場合を考えます。
現役時代の年間給与所得が600万円、退職後の年間所得が200万円として、比較してみましょう。

 

現役時代に自宅を売却する場合
  • 売却した年
    所得600万円-譲渡損2,400万円=-1,800万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 2年目
    所得600万円-1,800万円=-1,200万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 3年目
    所得600万円-1,200万円=-600万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 4年目
    所得600万円-600万円=0
    ⇒所得税ゼロ

譲渡損失2,400万円は全額、給与所得から控除できます。

 

定年退職後に自宅を売却する場合
  • 売却した年
    所得200万円-譲渡損2,400万円=-2,200万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 2年目
    所得200万円-2,200万円=-2,000万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 3年目
    所得200万円-2,000万円=-1,800万円
    ⇒所得税ゼロ
  •  

  • 4年目
    所得200万円-1,800万円=-1,600万円
    ⇒所得税ゼロ

所得税は同じく4年間ゼロですが、損益通算できるのは最長4年ですから、譲渡損失2,400万円のうち1,600万円が、所得から控除しきれません。

 

ここに挙げたのは1つの試算です。マイホームの売却や買換えは税金面から決めるわけではありません。ただ、税金面ではこういうケースがあることを知っておいて損はないでしょう。

まとめ

マイホームを売却して譲渡損失が生じたとき、売却代金で住宅ローンを完済できない場合、新たに住宅ローンを組んでマイホームを買い換える場合には、その譲渡損失を最長4年間、給与所得等から控除できます。要件を満たす場合は、確定申告することで税金の負担を減らせます。

 

不動産売却では、いくらで売れるかは大切ですが、税金や諸費用を差し引いて、いくら手元に残るかが大事です。不動産業者に査定・売却を依頼するときには、税金のことにも詳しい不動産業者、税理士と連携しやすい不動産業者であれば安心です。

 

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公開日 2018-01-22 更新日 2023/08/23 11:34:28